銘銘掃掃(めいめいはくはく)


「自立心を持つ」


 今日は自己の「自立」、「自律」の大切さについてお話したいと思います。
 埼玉県警察から、昨年(平成21年度)の埼玉県の自殺者の数値が公開されました。あまり話題にするには偲びない話ではありますが、自殺者の統計をとり始めたのが1978年からで、およそ30年になるそうです。昨年は自殺をされた方が今までで最も多い1796人ということで、一昨年よりも143人も増えたという事であります。
 これも社会現象の一つであり、色々な観点から議論しなければならない事と思いますが、自殺の原因を細かく見てみますと、第1位は「健康に関する問題」が一番多く962名、第2位が「経済に関する生活問題」が411名、第3位が「家庭問題」の146名、続いて「勤務問題」の97名、「男女問題」の49名、「学校問題」の30名、「その他」の63名、「不詳」の38名と続きます。
 これを年代別に見てみると50代が一番多く、続いて60代、40代、70代、30代、20代,10代の順だそうです。
 やはり全体から見ても”中高年”といわれる方が一番多く、また全国では昨年32、846人の方が亡くなっており、全国レベルで対比してもほぼ同じ統計であるそうです。
 このような社会現象にセーフティネットとして国・県・地元自治体の対応のあり方、本当の生活苦に対する行政のあり方の充実に期待する所大であります。
 読売新聞の連載に「草原の風」があります。これは、中国の古代に於ける物語であります。中国には仏教と同じく儒教という孔子の徳治主義の教えがありますが、この「草原の風」の文中に陋巷(ろうこう)という言葉が出てまいります。人間が住んでいるすべての世界をさす言葉で、そこに住んでいる人間は、人は常に貧しいのだ、苦しいものだという認識・・・そういう見方を陋巷というのだそうです。
 そうした社会環境の中において、我々一人一人の幸福をいかに自立させるかというのが、儒教の理念でありますが、その儒教の理念の中には、国や行政が人の幸福を助ける・・・セーフティネットを当てにせず、自分の事は自分で幸せを掴みなさいという非常に厳しい教えがあります。
 自分で自分を助けるものしか助からない・・・という自己自立といいますか、自己努力と云うか、それを抜きにして、困っているから、人様あるいは国や行政に助けを求める事は間違いだという強い戒めを説いているのであります。
 たとえ生活が貧しく苦しくても、死を選ぶ事でなく、自分の精神というものを、貧しさなりにも自分が立って生きて行く強い精神を持ちなさい!という儒教の教え、心の持ち方を「草原の風」の中に書かれていたのであります。
 それと同じことが仏教の法句経という短く韻文で書かれている経典の308番目に「身に慎みなくして国に施物を食うことなからん」と書かれております。
 心身を慎む気持ち、あるいは自己努力する意志のない者は、世の施しを受ける資格はないのですよ・・・とお経の中に説かれております。
 しかし、いくら自己自立を努力しても、どうにもならない場合というのもある訳でありまして、そういう時にこそ、国や行政の施物を受けるべきであり、国のセーフティネットという福祉の力、又、人々との相互扶助の力をもって生きて行けばいいのだと思う訳であります。
 決して自殺というのような方法、手段を選ぶことのないよう、今を、自分の精神的自立をしっかりもつこと、病気になっても、不況経済の困難にあっても、自分が強い精神的に負けない強い生き方が絶対あるわけであります。「自立」:自分が立つ、「自律」:自分を律する、この2つが今の日本人に必要なことであると考えるわけであります。皆様もどうぞ日々の更に自己努力精進してお過ごしいただきたいと思います。

合掌