一休入魂

2010年06月

第16回:祈りの力


 新緑の力強さを感じる五月のある日、當山参道にて、おばあさんに出会いました。その方は四国八十八ヶ所霊場巡りをされて、そのお礼に當山へお参りにみえておりました。ご本堂にて御本尊さまへお写経とお賽銭をいただき、般若心経一巻を一緒にお唱えし、巡礼の感想などをお聞きしました。その中の話の一端をお話します。
 その方は、當山のお檀家さまではなく川口市内に住んでおられる、七十歳を超えられた方で約六年間、當山参道にある四国八十八ヶ所霊場お砂踏みを時間のある時に訪れては踏んでいたそうです。
 そんなある日、諸事情にて生き別れになった息子さんから数十年ぶりに電話があったそうです。「親孝行をしたい」と。そんな訳で夢にも思わなかった四国巡礼の旅に、息子さんと二人で行くことになったそうです。初日の車内にて数十年の恨み、辛みを全て言われたそうですが、次の日からは親子二人手を取り合ってのお参りをしたそうです。仏さまのおかげだとそのおばあさんは涙ながらに語ってくれました。
 當山にも毎日多くのお檀家様、お散歩の方、通りすがりの方がいらっしゃいます。その方々を見ていますと、必ず御本尊さまへ合掌をされております。おそらく、願い事をしているのではなく、ただただ仏さまに手を合わせているように思えます。物事を合理的に考える人は、手を合わせれば良いことがあるのか、お願いをすれば叶えてくれるのか、と思う人もいるでしょう。そうではありません。ただ日々の生活の中、仏さまに対しただただ手を合わせる、そんな謙虚な姿勢や行いが、周りの多くの人に良い影響を与え、仏さまにも通ずるのではないでしょうか。
 祈りの力とは、ます己の行いや心を整えること、仏さまを一心に思うことによって作用するものであり、おそらく祈りの力が作用する時は偶然ではなく、必然なのかもしれません。なぜなら仏さまはいつも見ていてくださるのですから。

合掌