一休入魂

2010年12月

第18回:お互いさま


 秋の紅葉も終わりを向かえ、いよいよ年越しの準備がはじまり、日本全国があわただしくなる季節、みなさま忙しいと言って、心を亡くしていませんか?
 先日、當山の近くの小学校でマラソン大会がありまして、密蔵院の前の道もそのコースとなり多くの子供たちが一生懸命に走っておりました。そして、その子供たちが安全に走行できるように子供たちの父兄さんが寒いなか交通整理をしており、とても賑やかに開催されておりました。
 そんな中、あるお話をご年配のお参りの方からお聞きしました。その女性は密蔵院へ歩いて向かっている時、ちょうど子供たちの走る列が迫ってきたので、歩道から車道へ出て道を譲ったそうです。そして、子供たちが通り過ぎるのを確認してからまた歩道へ戻ったそうです。その時ある父兄から「子供たちがまだ来るんだから入るな!!」と強い叱責を受けたそうで、その女性は強い憤りを感じたそうです。しかし、すぐ別の父兄が「申し訳ありません、ご迷惑をお掛けします」とのお言葉を掛けていただいたので、文句も言わず密蔵院へお参りに来たとお話をしていました。
 私は、このお話をお聞きした時「お互いさま」という言葉が、最近はあまり使われていないように思いました。「お互いさま」というのは好むと好まざると人は生きていく為には、大小はあれど、他の人へご迷惑を掛けてしまう、お互いに助け合って生きているという意味の言葉です。最近では個人の権利や主義主張が強くなるにつれて、この「お互いさま」があまり使われなくなっているように思います。
 子供たちのマラソン大会を無事に開催する上で、ご父兄のご協力は大切であり、寒い中頑張っている姿を見ると感心するほどです。しかし、コースは一般道であり、多くの方が利用しています。歩行者であったその女性がもし、子供たちを避けるために車道へ出て、事故にでも巻き込まれてしまっては本末転倒です。子供たちを熱心に応援するうちに心が亡くなってしまったように思います。しかし、それを見かねた別の父兄の思いやる言葉にその女性は救われたようです。言葉一つに思いやり、お互いさまの気持ちを込めるだけでこんなにも違いがでてしまうんですね。
 これから年末を向かえるにあたって、大変忙しくなるのがこの季節。誰もが慌ただしくなり、心に余裕がなくなるのもこの師走です。どうかみなさまが心を亡くし、心ない言葉や行動をすることが無いことをご祈念いたしております。

合掌